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ボルダリングの「レスト日」って?たった1つの「頑張って」休む理由!

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タイル張りのマンションに手をかけてフリクションを確認、仕事中も上の空で妄想クライミング、壁を想像するだけで手汗足汗ダラダラ、果てに"壁"と聞くだけで涎垂らして白目を剥いてアヘ顔ダブルピースが絶えないボルダリングバカ(通称ボルバカ)の紳士淑女の諸君。

 

 

おはよう。マッソだ。

 

 

私もボルバカになって久しい者だ。

 

なのでドン引きしている初心者諸君に言い添えておくと、上記の「ボルバカ」は実は相当数いるのだ。

 

正直手汗足汗のくだりまでは

「こうなってからが一番楽しいのに、そんな症状にすらなってないの?!」

と初期の症状ですらある。ボルダリングジムでは逆に引かれてしまうくらい一般的であるのだ。

 

 

もはや犬である。パブロフの犬状態である。

 

 

壁の奴隷(もとい犬)であるのは決して悲しいことではない。(むしろ一種の快感ですらある)

問題は奴隷化が進みすぎて、「毎日ボルダリングをしている」これがまずいのだ。

 

なぜか?

 

レスト期間(ボルダリングをしない期間)を設けない、or期間が異常に短い為だ。

 

 

「なぜレストを取らなければならないのか?」

 

「レスト時はどう過ごせばいいんだ?」

 

「そもそも強さを手に入れる為になぜ休むのか?」

 

諸君らの声が聞こえてきそうだ。

 

ヒートアップはそのままに、頭はクールに、レストを1から再評価したいと思う。

ではここから今日の本題である「レスト」について論じていこう。

 

 

レストを再評価せよ!

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レストとは? 

今回はボルダリングを日単位で休む「レスト日」をレストと呼び再評価していく。

 

レストとは「ボルダリングウォールから完全に離れ、ボルダリングで酷使した筋肉群を修復すること」為に行う事だ。

格好つけてレストなどと言ってるが、要するに「休息日」だ。

それを日単位で行うことで傷ついた筋肉を修復、成長させ、次回のトライでより高いパフォーマンスを発揮することができるようになる。

 

ここで重要なことは「休んでいる間に筋肉が育つ」ということ。

勘違いしがちなのはトレーニング中、我々ではボルダリング中に筋肉が育つわけではない、と言うことだ。

あくまでも筋肉を使う→筋肉が傷つく(細かく断裂する)→筋肉を修復する→筋肉が発達する→パフォーマンスが出せる

という一連の流れが重要なのだ。

 

 

超回復を制覇せよ!

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このルーティンを「超回復」と言っている。(中2感溢れるが、ちゃんとした用語だ!)

 

「じゃあ1日休んでまた登りに行ったらいいんだねーそしたら強くなるねーすごーい」と勘違いしそうだが

 

まてぃ!

 

超回復はそんな単純ではない。

我々脊椎動物は1日のんびり休んだからと言って簡単に回復する簡素な構造ではないのだ。

 

以下の図を見てみよう。

 

超回復

これは超回復を至極簡単に表した図式だ。

きちんとした休養を取ることによって回復後、この図では山に当たるところが横軸を右に進むに従って少しずつ高まっていることがお分かりいただけるだろう。筋力修復後に筋量が向上するため、ポテンシャルが向上しているということなのだ。

 

しかし気を付けなければならないのはこの「きちんとした休養」に定まった期間はないということ。

 

トレーニング、酷使した筋肉部位により休養期間は変動するのだ。

では休養期間を十分に設けないままにトレーニングを重ねるとどうなるのか?

 

以下の図を見てほしい。

 超回復2

 このようにトレーニングを継続しているにも関わらずオーバーワークにより筋力は消耗し、ポテンシャルは低下の一途をたどる。これはオーバーワークをし続けるという極端な例だが、オーバーワークを挟んでしまうことで成長が遅れてしまう事実は重く受け止めねばならない。

 

しかし登れるのだ。レストを取らなくたって。

 

確かに身体は疲れている、筋肉痛も日に日にひどい、身体も重い、指にも違和感がある、でも登れてしまう。だから恐ろしいのだ。

 

このサイクルが続くと身体は全力で悲鳴を上げる。

 

結果として指をパキる、肩、股関節、膝などの大きな関節回りを負傷する、手首にTFCC損傷が起こるなど治療に下手すれば一生付き合わなければならない怪我に見舞われる。

 

怪我により成長は著しく停滞、もしくは後退を余儀なくされるだろう。

最大グレードの更新もままならず、グレード後退を余儀なくされるケースも多くある。

 

そこで後悔しても遅いのだ。

 

諸君が怪我のリスクを最小限に、そしていつも最高のパフォーマンスをだして最高グレード更新に、最高のエンジョイクライミングを行うために、ここから先も読み進めて欲しい。

 

 

リアル世界の「レベルアップ」を体感せよ!

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ゲームの世界は素晴らしい。

 

モンスターを倒せばわかりやすくレベルが上がり、攻撃力、防御力、MP、HPがあがる。そして宿屋で寝ればこれまたわかりやすくHPMPは全快、しかも戦いにおいて疲労で攻撃力や防御力が落ちることはないからな。

 

リアル世界では宿屋のベットで朝になったらHPMP全快!などというほど単純ではない。

しかもモンスター(課題)と戦えば戦う(トライ数が増える)ほど疲労が牙を剝いてくるのだ。

レベルアップも「テレレッテッテー」と天から音は聞こえてこない。

 

しかしリアルのほうがよっぽど面白い。

 

モンスターを倒した時は見えにくいが、レストによって

「最大HP100→HP150?!え?攻撃力は15アップ?!すごい! 」というステータスの上限アップもありうるのだ。

 

またレスト時、特に睡眠時に昼間に取り込んだ動きの最適化を脳が行う為、ムーブだってより洗練されていく。

 

ムーブの最適化の本番はジムで起こっているわけではない!

 

布団で起こっているのだ。

 

レストと言ってものんびり休んだり、適当に寝るだけではダメだ。

 

身体の修復はほぼ睡眠中に行われる。綺麗に修復できるように準備が必要なのだ。

なので「のんびり休む」というのも正しくはない。正しい休み方をしないと十分な修復とはならないのだ。

その休み方については別に記したいと思う。

 

 

超回復に必要な時間をマスターせよ!

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超回復にかかる時間についてだ。

 

それは年齢」、「生活習慣」、「運動内容」、「筋肉部位」によって総合的に変化する。

 

一概に1日、2日と決まっているものではないのだ。

諸君の参考までに要素を以下に書いておこう。

 

超回復の早まる要素

 

1、若さ(18-22歳までが最も早い)

 

2、トレーニングを頻繁に行っている

 

3、持久的なトレーニング(ジョギングなどがわかりやすいだろう)

 

4、女性より男性(テストステロン量の関係)の方が早い

 

逆に遅れる要素もあるので記載しておく。

 

超回復が遅れる要素

 

1、緊張状態が長時間続くトレーニング

 

2、精神的に疲れる実践練習など

 

3、高負荷トレーニング

 

4、長時間の反復トレーニング

 

筋肉別の回復時間も重要だ。

以下に載せておく。

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これらの要素をボルダリングに当てはめていく。基本的にボルダリングは全身スポーツだ。

 

ホールドを掴む指の筋肉(前腕の筋群)、壁に身体を近づける「ロック」を行う為の上腕や背筋群、

身体を支える「体幹」と総称されることが多い背筋群、腹斜筋や腹筋群、尻の筋肉である大臀筋

ハムストリングスなどもそうだ、ホールドを踏み抜く為の膝から下の筋肉群、

忘れてはならないのが足指の握力(最近話題の足趾把持力だ)、

 

ただ登るという行為に文字通り全身をくまなく使用している。

 

上記筋肉別の回復時間に照らし合わせれば3日は休めというデータが読み取れるだろう。

 

しかしこれは現実に即していない。

その他の要素も総合的に考えよう。

 

我々はボルダーだ。

 

妄想で手足汗が吹き出るくらい日々訓練を積んでいるのだ。

これはトレーニングを頻繁に行っていると言い換えることができる。

 

また精神的負荷が強くかかる場面は勿論あるが、トライの直前や本気課題の本気オブザベーション時などで常に緊張状態に身を置いていることは少ない。

 

大会となればまた違った側面もあるが、今回は日常的なボルダリングだ。その要素は捨ておこう。

 

むしろ強い緊張状態は無用な力を使ってしまうため、筋力を消費する。

 

ボルダーにはリラックスが求められるのだ。

 

持久力で静的に動く場面と瞬発力を発揮し動的ムーブをこなす場面を分けなければすぐにバテてしまう。

諸君らも経験があるだろう。

 

ボルダリングが長時間の反復トレーニングであることは注目せねばならない。

 

1つの課題にトライした後にどのくらいレスト(ジムにおいて登らず身体を休める短時間の休息、オブザベーションなども含む)を入れるのは個人差があるからだ。

 

またジムでの滞在時間、トライの仕方でも差が出ることに留意しなければならない。

 

ガンガン登って2時間で帰る場合とダラダラ登って5時間ではどの筋肉群にどの程度の負荷がかかるか、大きく変動する為だ。

その日カチ課題をメインに取り組んだのか、それともスローパーでパーミング祭りだったのか、そういったことも考慮しなければならない。

 

登る日の季節、天候、ジムの立地も重要である。

 

寒い時期なのか、最初から身体が温まっている時期なのか。

それによりアップに費やす時間や、ホールドの感触は変化する。

夏場や雨天などはやたらと湿度が高ければぬめるホールドにパワーを奪われることもあるだろう。

 

要するに正しい超回復の時間は

「個人差、日、体調によって差がある」ということだ。

 

おいおいマッソ、ここまで来てそれはないだろう?」

 

と今にも諸君らの声が聞こえてきそうだ。

 

しかし、この個人差という認識が大切なのだ。

 

休息がおろそかになれば怪我の危険性に直面する。ボルダリングは超高負荷スポーツだ。

 

4m程度の壁という普通に考えれば高所、そこから飛び降りるだけでも怪我のリスクはつきまとう。

それだけならまだしも、最大限に体幹をいじめ、関節に負荷をかけ、豆粒大のホールドに足の指をねじ込み、5ミリ程度の厚さに指をかけるのだ。

 

怪我をするなという方がどうかしている。

 

怪我をしなければ上手くなると人はいう。

しかし怪我をするタイミングは誰もわからないのだ。

 

唯一怪我の兆候に気づけるとすればそれは諸君ら、自分自身だけなのだ。

 

レストをするたった1つの理由。

それは自分の肉体状態と向き合う時間(レスト日)を作ることで、自分の肉体の良い点も悪い点も正確に把握できるようにする為だ。

 

自分に合ったレスト期間、レスト日を身体と相談して判断、実行し、次のトライに備える。

 

怪我をしない、そして毎回最高のパフォーマンスを出すには必要不可欠なことだ。

最高のパフォーマンスでトライを繰り返すからこそ、諸君各々の完登最大グレードの更新が現実のものとなるのだ。

 

自分の身体をかえりみずにトライ回数のみ増やせば、超高負荷課題を打っている諸君らの身体には多大なダメージが益々蓄積する。

それらは怪我という形で諸君らに牙を剥く。結果完登最大グレードの後退、ということにもなりかねない。

 

ボルダリング仲間に誘われるとつい行きたくなるかもしれないが、そういう時はこう言おう

 

「今すげぇ頑張ってレストしてっから!まじで!」と。

 

3日も休んだのに疲れが抜けない、でも登りたい、なんていう時もあるだろう。

 

上記の要素からも時間=休息度合いではないことは諸君らも承知してくれていると思う。

そんな時は負荷の低い課題で身体をほぐして過ごす、など上手く身体と付き合って頂きたい。

 

長くなってしまった。

 

「のんびり休むじゃダメと言ってたけれどどうレストすればいいのか?」については、また違う席で話すとしよう。

 

 

おまけ!マッソのレストを覗き見よ!

 

ここまでレストの時間は個人差だと言ってきたが、大まかに私マッソのレスト時間について追記しておく。

上記であげたように運動強度、頻度、時間によりレスト時間が変動する為、ここでは簡単に述べるに留める。

そして今回述べられなかった「休み方」も多いに関係してくる為、参考程度にしてくれ。

 

私は一度ジムに行くと4、5時間は滞在する。基本的に打つ課題は2級をメインに、ジムによっては1級、初段などだ。

それを週に2日、3日行う。レスト期間は平均丸々2日としている。

 

理由として

 

1、2日あれば前腕、上腕、尻、背の筋肉痛が取れる為(身体の重さもなくなる)

 

2、2日以上休むと未完登課題(特に1級以上)のムーブ精度が落ちる為

3、そもそもそれ以上我慢できない(ボルバカ)為

 

である。

ただ必ず2日かというと1日だけレストするという事もあるし3日ということもある。

 

1日レストで登りたい気持ちは正直強い。しかし基本的に私のボルダリングは「いつも限界まで登り、もう本当に登れない」ところまで行うのでこういったレストにならざるを得ないのだ。

 

諸君らの中にはまったりエンジョイクライミングを好む者もいるかもしれないので勿論この限りではない。

自分のフィジカルとメンタルと相談しながらその時々にマッチしたレストを行ってくれ。

 

以上だ。

 

 

おまけのおまけ!追記!

 

更に追記だ。失礼する。


先日3日レストで体調バッチリの中、初めて行くジムへ訪問してきたマッソだ。

 

そこでは

 

・3-2級課題をメインに行い

(アップ、ダウンを行なっているので30分はそれより低難度の課題を行なっている)

 

・滞在時間2時間半程度の短時間のボルダリングに留めた。

 

ボルダリング中のレストは多め、レスト中もパンプダウンのマッサージを怠らなかった。

 

上記状況ではレスト1日でも疲れは感じなかった。(翌日は全身が気怠い程度)

 

今までの経験と身体の状況を総合的に判断しても、怪我に繋がる疲労は残っていないと思える。


やはり疲労は登る課題内容、時間、ボルダリング中のレストタイミング、そしてベースとなる体調に大きく左右されることが再確認できた。


諸君もこれを機会に自分の体調と真摯に向き合ってくれ。

それにより身体のキレがいい時、悪い時、また怪我の発生予察となる身体のおかしな挙動など新たな発見があるかもしれない。

 

身体の伝えてくる信号は必ずバックグラウンドがある。

 

結果、怪我を最小限に抑え、毎回のトライで最高のパフォーマンスを出すことに繋がるのだ。